第13回 PMS(月経前症候群)
生理前のイライラ・不調……「PMS」の正体と上手な付き合い方
毎月やってくる生理。その数日前から、「些細なことでイライラしてしまう」「気分がひどく落ち込む」「強烈な眠気に襲われる」といったお悩みはありませんか?
日々の診察室でも、「自分の性格が変わってしまったようで辛い」「周囲にあたってしまい自己嫌悪に陥る」とご相談を受けることがよくあります。「いつものことだから」「生理前だから仕方ない」と一人で抱え込んでいませんか?
それは決してあなたの我慢が足りないからではなく、心と体からの「PMS(月経前症候群)」というサインかもしれません。
■ PMSが起こる「本当の理由」とは?
PMSのはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、最も有力なのが「女性ホルモンの急激な変動」と「脳内物質の低下」です。
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女性ホルモンの急降下 排卵から生理が始まるまでの約2週間(黄体期)は、「プロゲステロン(黄体ホルモン)」と「エストロゲン(卵胞ホルモン)」という2つの女性ホルモンが多く分泌されます。しかし、妊娠が成立しないと、生理の数日前にこれらのホルモン分泌量が急激に低下します。この急激な「ホルモンの波」に脳が過敏に反応し、自律神経が乱れることで、様々な不調が引き起こされると考えられています。
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「幸せホルモン」セロトニンの低下 ホルモンの急激な変動は、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」の分泌を低下させることが分かっています。セロトニンは精神を安定させる働きがあるため、これが不足することで、イライラ、気分の落ち込み、涙もろくなるなどの「こころの症状」が強く現れます。
■ こころの症状が特に重い「PMDD(月経前不快気分障害)」
PMSの中でも、特に精神的な症状が重く、日常生活や対人関係に支障をきたしてしまう状態を「PMDD(月経前不快気分障害)」と呼びます。
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自分をコントロールできないほどの激しい怒り
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強い絶望感や悲しみ
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仕事や学校に行けないほどの無気力
「単なる生理前のイライラ」のレベルを超えて辛い場合は、PMDDの可能性もあります。これも適切な治療で改善が期待できます。
■ 産婦人科での具体的な治療・アプローチ
クリニックでは、患者様の症状の重さ、妊娠の希望の有無、ライフスタイルに合わせて、主に以下のような治療をご提案します。
1. 排卵を抑えて波をなくす「低用量ピル(LEP)」
PMS治療の代表的な選択肢です。お薬によって排卵を一時的にお休みさせ、女性ホルモンの変動(波)を平坦にすることで、PMSの症状を根本から抑えます。生理痛の軽減や、生理周期を安定させるメリットもあります。
2. 体質から改善していく「漢方薬」
ピルに抵抗がある方や、妊娠を希望されている方、むくみや冷えなどの症状が強い方によく用いられます。患者様の体質(証)に合わせて処方します。
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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん): 冷えやむくみ、貧血傾向がある方に。
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加味逍遙散(かみしょうようさん): イライラやのぼせ、気分の浮き沈みが強い方に。
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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん): 下腹部痛や肩こり、頭痛などが強い方に。
3. つらい症状をピンポイントで和らげる「対症療法」
頭痛や下腹部痛が強ければ「鎮痛剤」、精神的な不安感が強ければ「抗不安薬」など、今あるつらい症状を取り除くためのお薬を処方します。
4. 心の症状にアプローチする「SSRI(抗うつ薬)」
PMDDなど、精神的な症状が非常に強い場合には、低下してしまった脳内のセロトニンを増やすお薬(SSRIなど)を処方することがあります。生理前のつらい期間だけ服用する方法もあります。
■ 診断への第一歩は「記録」すること
PMSの診断において一番重要なのは、「その症状が本当に生理前(黄体期)だけに限局して起こっているか」を確認することです。 基礎体温を測ったり、手帳やスマートフォンのアプリに「いつ」「どんな症状があったか」を1〜2ヶ月記録してみてください。ご自身の不調のリズムが見えてくるとともに、医師にとっても適切な治療方針を決めるための大切な手がかりになります。
■ つらい時、日常でできるセルフケア
まずはご自身を労わり、無理をしないことが第一です。日常生活では、以下のことを少しだけ意識してみてください。
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睡眠をしっかりとる(心身の回復に欠かせません)
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バランスのよい食事を心がける
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軽い運動をする(血流を良くしリフレッシュに繋がります)
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ご自身の症状を記録する(不調の波を把握・予測しやすくなります)
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とにかく無理をしない(この時期は頑張りすぎないことが大切です)
■ 「生理前だから仕方ない」とひとりで我慢しないで
毎月くり返すイライラや心身の不調は、治療や生活習慣の見直しによって和らげられる可能性が十分にあります。
「いつものことだから」と我慢せず、つらいと感じたら、お気軽にご相談ください。一緒にあなたに合った改善策を見つけていきましょう。
